長期的視点で後伸びする教育を

「ぼーっとする時間」の大切さ

最近いくつかの幼児教育に関する本を読んでいて、また、実際の子どもたちを見ていて、「これだけは間違いない!」と思うことがあります。それは、勉強以外の時間がいかに大切か、ということです。

現代の子どもたちは、幼稚園児や小学校低学年であっても塾や習い事で大忙しですよね。とくにハワイで育つバイリンガルの子どもたちにとっては、基本のお勉強だけでも、現地校(英語)の学習と、補習塾などでの日本語の学習で、普通にモノリンガルとして育つ日本国内の子どもたちの倍、やるべきことがあるわけですから大変です。

高学年以降になると、「暇を与えればゲームばかりする」という話も聞きます。青少年のインターネットやゲームへの依存も社会問題となるこのご時世ですので、勉強やスポーツなどの健全な活動によって忙しくさせてあげるのは良いことだと思います。

ただ、「ぼーっとする暇」もないほどの多忙なスケジュールで一週間を埋め尽くしてしまうのは、どうでしょうか。

実は、この「ぼーっとする時間」が、とても大切なのだと、複数の育児書に共通して書いてあるのです。子どもたち、とくに幼児~低学年のうちは、何もしていないように見える「ぼーっとする時間」の中で、日頃の外部からの刺激を整理したり考えたりして、内面的に成長しているのだそうです。大人でも一人でぼーっとする時間って必要ですよね。毎日が刺激的で新しい学びの連続、というのもいいですが、過密スケジュールでは、思考の整理が追い付かなくなります。

遊びの大切さ

知識の先取りよりも勉強が好きになる心がけを!

また、これもあらゆる育児書に書いてあることですが、幼児期~低学年において「遊ぶ時間」はとても大切です。当たり前のことですが、幼児期の子どもたちに必要な学びは、プリント学習よりも、子ども同士のコミュニケーションや自然との関わりなど、遊びの中に多くあります。

幼稚園児や小学1~2年生がどれだけ早くひらがなカタカナ漢字あるいは計算をマスターしたとしても、その先の伸びが今一つであった場合、あっという間に年齢と共に周りに追い付かれてしまうものです。もちろん本人が好きで楽しく覚えているなら全く問題はないのですが、「知識の先取りにそれほど大きな価値はない」というのが私個人の考えです。

勉強とは本来、知的好奇心が刺激されるスペクタクルで喜びに満ちた体験です。ところが子どもたちからは「勉強したくない」「勉強が嫌い」「勉強するより遊びたい」という声がたびたび聞こえてきます。子どもたちが学習に対してネガティブなイメージを持っていることはとても残念です。

幼児教育や早期教育というものは、それが教育だと子ども気づかせないように、遊びの延長として、遊ぶように楽しく学ばせることが一番のポイントで、子どもが「お勉強させられている感」を感じるような早期教育的雰囲気は禁物です。

もしお子様が年齢相応の読み書きや計算も出来なければ、親としては焦る気持ちがあるのは当然のことです。私も一人の親なので、親の立場で考えると、プリントは何も書いていない、宿題はランドセルの中でぐちゃぐちゃ、というのを見たら、心穏やかではいられないでしょう。ですが、短期的な視点で目先のことだけを考えて、無理に勉強させても、長期的には親も本人も苦しいばかりです。「遅れないようにすること」に必死なあまり、子どものモチベーションを奪わないようにしたいものです。

小学校低学年のお勉強は、内容自体は難しくありません。小さな子どもには難しくても、大きくなれば誰でも出来るようなことばかりです。つまり、いつでもやる気になれば挽回出来るレベルのことなのです。そんな時期に、親が「先取り」や「遅れてはいけない」と必死になるあまり、無理やりお尻を叩いて子供を勉強嫌いさせてしまっては本末転倒です。

もちろん、小学1~2年生の先取り学習にも、メリットがないわけではありません。クラスのお友達よりも少し出来るということが自信に繋がり、それが勉強することへのポジティブな感情を育むのあれば、それは良いことだと思います。ですが、何度も繰り返しになりますが、幼児期~低学年の子どもにとって最も大切なのは「知識の先取り」ではなく「勉強が大好き」「新しいことを知るのって楽しい」というマインドセットを育むことです。

それさえあれば、いずれ自然に学びたくなり、知的好奇心や承認欲求によって高学年や中学で後伸びします。そして、そのためにポイントとなるのは、やはり子どもが「求めている時に与える」ということでしょう。ひらがなを覚える時期も、人それぞれです。2~3歳で覚える子もいれば、7~8歳くらいでやっと覚える子もいます。また、早くから文字に関心を示す子どももいれば、恐竜や宇宙について興味がある子もいます。興味の湧く事柄も時期も、個人差があります。それは優劣の問題ではなく、単なる個人差です。

それに対して、大人の方が「2~3歳でひらがなや足し算が出来るなんてスゴイ!」とか「7歳でも書けないなんて」という価値観で子どもに接さないことです。出来ないことを責めたり親が落ち込んだ態度を取ることが良くないのは言うまでもありませんが、とてもアカデミックに強いお子様の場合であっても、それを過度に褒めるのは、親の期待通りにやれというプレッシャーに繋がるので控えたいものです。良い結果い対しては軽いノリで「いいね!」「嬉しいね!」と言いましょう。

「勉強するより遊びたい」と言う子どもは、満足するまで思い切り遊ばせましょう。遊びや自由な時間が足りていないことによって、勉強へのモチベーションが今一つ湧いてこない、ということもあります。それに、全く興味のない子どもに教えようとしても、どのみち効果は低いです。学校や友達との関係、日常生活の中で、文字や数量、科学などに自然に触れていれば、少しは自分から興味や関心を持つものです。そのタイミングを見逃さずにキャッチして教えてあげれば、親も子どもも少ない努力で何倍もの効果があります。何事も、欲しがる前に与え過ぎないことが大切です。

とは言え、私どもの学習教室では、保護者の皆さまの大切なお金と子供たちの貴重な時間を頂いている以上、授業中に全く日本語学習とは無関係な遊びをするわけにはいきません(笑)。だからこそ、宿題のサポートも必要ですが、ご家庭では大いに(公園などで)遊ばせて頂きたいと思います。例えばお休みの日などは「午前中遊んだら午後少しお勉強しようか」とか「宿題が終わったら公園に行こうか」といった感じで、親子で納得できるルールを決め、メリハリをつけて、遊びにも価値を置いてみてはいかがでしょうか。