久しぶりのゴルフ

  同居していた義母が今年、他界しました。アルツハイマー性の認知症の義母と同居するようになってから、しばらくゴルフをしていなかったので、約10年ぶりに夫婦一緒にショートコースでゴルフをしました。義母は徘徊の心配がありませんでしたが、さすがに長時間、一人で留守番をさせる訳にはいきません。久しぶりのゴルフでしたが、以前、こんなに小さなボールをあんなに離れたグリーンの上にのせるなんてよく器用なことができたなと我ながら感心しながら悪戦苦闘しました。結局、スコアーをつけることを諦め、気ままに飛んで行くボールの後を追いかけながら、ゴルフ場を散歩したようなものです。でも、久しぶりのゴルフは、とても気持ちのいい汗をかかせてくれ、すがすがしい気持ちにさせてくれました。介護を経験して、子育てと介護はとても深い関係があると実感したので、参考までに紹介します。

「老後の資金がありません!」

 最近、ユーチューブの番組において日本で上映中の天海祐希主演「老後の資金がありません!」の紹介テロップを見ました。この映画は面白そうなので「見てみたい!」と思いましたが、日本の映画館に行くことは現状到底できないので、ハワイ天理文庫でこの映画の原作となっている垣谷美雨著「老後の資金がありません」を借りて読みました。映画とは設定が多少異なるようでしたが、映画化された話題作をすぐに読めるのはいいですね。この物語は、定年を目前に控えた熟年夫婦の人生の喜怒哀楽を織り交ぜて人生の様々な生き方の人間模様が描かれています。でも、映画では、もっとコミカルな内容になるように脚色して、娯楽性たっぷりの作品に仕上げているようです。最終的には、ハッピーエンドになるものの、現実的に起こりそうな内容となっているので、なかなか考えさせられる作品です。機会があったら是非この本を読んでみてください。この本は、既にハワイ天理文庫に返却しています。もし本を探すのが大変だったら、司書の岡田先生に訊きましょう。

ハワイのケアホーム

 ハワイは高齢化が進み、多くのケアホームが存在しています。そして、ハワイのケアホームは一般的に高額となっています。テレビで広告宣伝しているようなケアホームだとおよそ月額1万ドル以上かかります。また、シェアルームのようなケアホームでもだいたい月額6千ドルはかかります。そのため、多くの高齢者は面倒を見てもらう必要がある場合、家族と一緒に暮らすことになります。同居してもらえる高齢者は幸運ですが、同居できない高齢者も多く、ハワイでは現在、65歳以上の一人暮らしの高齢男性が約1万2千人、女性が約2万4千人となっています(引用 ハワイ州2020 DATABOOK)。なお、高齢者向けの公的な施設もありますが、現在殆ど空きのない状況です。

義父のSOS

 義父は、義母がアルツハイマー性の認知症となり、料理などの家事が一切できず、何度も同じ話を昼夜関係なく繰り返すので、「今まで我慢してきたが、二人だけでこれ以上一緒に生活することはできない!」と悲痛の叫びをあげました。そこで、義妹が新居を購入したことを機会に、小学低学年の娘二人の子育て真最中であったものの、二人をハワイ島から引き取ることにしました。義父は、喜んで引っ越してきたものの、「夫婦で一緒に暮らす限り日常生活の苦境はあまり改善されない」と不満を漏らし、結局、義母と別居させる方が良いということになり、義母を我が家で引き取ることにしました。義父は暫く落ち着いた安穏の日々を過ごしたものの、数年して白血病にかかり、家族に見守られながら穏やかに息を引き取りました。

義母との生活

 義母は、アルツハイマー性の認知症でしたが、温厚で明るい性格だったので楽しく一緒に暮らすことができました。大好きな大相撲を、手をたたいて喜んで観戦して「プッシュ、プッシュ」と合言葉を交わしていました。帰りの映画館の駐車場で、映画の感想を聞くと「これから映画を見に行くの?」と笑わせたり、子供や孫などの名前当てクイズで一喜一憂したりしていました。また、毎回同じ文句を唱えながらも、散歩の日課をかかさず、その後のアイスクリームの御褒美を美味しそうに食べていました。

介護と子育ての大きな違い

 介護と子育ての大きな違いは、子育てはだんだん手がかからなくなるのに対して、介護はだんだん大変になるということです。義母も最初は毎日デイケアに通いましたが、だんだん自分で着替えることすらできなくなり、また、朝早く起きるのが辛くなりました。歩行もままならず、妻がデイケアに連れていく時は、いつも大騒ぎになりました。そして、義母が部屋で倒れているのが早朝に発見されるという事件があり、義母は救急車で病院に搬送されました。結局、身体に損傷はなかったものの、義母は倒れると起き上ることができず、また、何が起こったのか覚えておらず、抱き起こそうとしても、ただただ痛みを訴えるだけなので病院に搬送することにしました。それ以降、妻は義母の調子が悪い時には添い寝をして、そうでない時でも、監視モニターをベッド脇に置き、いつでも異常を感知できるようにしていました。デイケアがコロナ対策で閉鎖を余儀なくされた頃には、頑張って週2回以上デイケアに行くことが義母の目標になっていました。

生活様式の調整

 だんだん介護の負担が大きくなり、家事が滞るようになりました。部屋の掃除は殆どすることはなく、床には荷物が散乱するようになって、洗濯物も溜まり、庭には雑草が生い茂り、食事もテイクアウトが中心になりました。妻は農家の出身なので、さほど気にしませんが、どうも私の方が先に参ってしまいました。前述のケアホームよりも自宅で面倒を見る方が、経済的にも環境的にもずっと良いので、結局、その場でできる人間がやるべきという信条から、率先して家事のテコ入れに専念することにしました。もともと料理は、学生時代に夜食は自分で用意していたし、また、大学では札幌すすき野の高級焼き鳥店でアルバイトをして、簡単な料理なら客に提供できるまでになっていましたので、料理をするのは好きな方でした。店長に会社勤めになっても二つの仕事を持てるぞと言われましたが、さすがに学部の授業が始まり、本格的に学業が忙しくなったので辞めました。また、部屋の掃除については、我が家の猫たちの鼻が黒くなっているのを見るたびに可哀そうに思っていたので、これは絶対に掃除をするべきと思っていました。

義母の突然の他界

 義母は外出先で転倒して、腰の骨を折る大けがをしました。病院で手術をして無事回復しましたが、機能回復のためにリハビリ療養施設に入りました。リハビリは順調でしたが、1か月もたたないうちに突然療養施設から病院に救急車で緊急搬送されました。理由は、体調不良ということでしたが、調べてみると内臓破裂が起きたということです。原因は不明ですが、医師によれば極度の便秘でも起きることがあるということでした。自宅であれば、妻が何時でもトイレに連れ添って世話をしていましたが、もしかしたら慣れない環境で我慢してしまったのかもしれないと妻は悔やんでいました。もちろん、オムツをしてあるのでそのまますればいいのですが、見ず知らずの介護施設では恥ずかしかったのかもしれません。コロナ対策のため、施設に入ることが禁止され、週1回15分間程度の屋外での面会しかできなかったことが心残りです。リハビリ施設で体調がさらに良くなって一緒に暮らせると期待していただけに本当に残念でした。

家族の絆

 義理の両親が介護を受けられたのは、親孝行な娘二人のおかげです。両親は忙しい農業に従事しながらも、娘二人に大学を卒業するまで一生懸命支援を続けました。また、「老後の資金がありません」においても、家族の絆が最終的に、家族を幸せに導く結果となっています。

 子育てと介護は、共に家族の絆が具象化されたものです。大切な家族との時間を大切にして、幸せな家庭を築いてください。

Merry Christmas & Happy New Year!

マハロ