みなさん「集中力」と聞いて、何を思い浮かべますか? 勉強やスポーツなど「目の前のことに集中して取り組む力」というのが一般的なイメージかと思います。
しかし今日お話したいのは、もっと大きなスケールで、「将来の目標」や「自分の目指す人生の方向性」に対して集中して歩むための「集中力」についてです。
みなさんの周りにも、小さい頃から将来の夢が決まっていて、そのままブレずに大人になってその夢を叶えた人、一人や二人はいませんが? 幼児期からそのまま将来の夢が変わらずに実現させる人はそういませんが、中学や高校くらいならどうでしょうか? 高校生くらいになると、この時点ですでに将来の方向性が決まっている人も結構いますよね。私の高校時代の友人の中にも、銀行に就職したいからと言って経済学部に入り、そのまま就活も最前線でスタートして大手メガバンに就職した人、大好きなダンスを仕事にしたいと言ってダンススクールを立ち上げた人、など、高校時代からブレずにその道一本で走っている人が何人かいます。
これって、そんなに「すごい」ともてはやされるようなことではないかもしれません。逆にそういう一本道の人生をつまらないと感じる人もいるかもしれません。ですが、とても選択肢の多いこの国際化した現代社会では、大学選びの時点、あるいは就活の時点でも、自分のやりたいことがよく分からない人は大勢います。昔はなかったような新しい職業、例えばユーチューバ―など、一昔前なら笑われたかもしれないような活動でも、普通の会社員の何倍も稼いでいたりする時代です。海外に出て活躍することも一昔前よりずっと敷居が低い。そんな多様な現代社会の中で、高校生の時点ですでに将来何になりたいか決めるのは、意外と簡単なことではありません。しかもそれで違和感なく10年後も20年後も「これが天職だ」と思える人は、かなり恵まれている人でしょう。そういった自分の中の適性を早期に発見出来ることは、一つの才能です。
もちろん、回り道をして試行錯誤して時間をかけて、紆余曲折の果てに本当に自分のやりたいことが見つかった、という人生も素晴らしいと思います。なんでも「早く決めるからいい」というわけではありません。
ただ、選択肢が限りなく広くある新しい時代の中では、「不要な物を捨てていく」ことが絶対に必要です。そうしなければ、本当に時間を割くべき事柄に十分に時間を割けなくなるからです。この、「不要な物を捨ててより重要度の高い事柄に集中して時間を当てていく」能力を、私は「人生を左右する集中力」と呼んでいます。
いわゆるお勉強時間中の一般的な集中力でもそうですが、「集中力がない」というのは、逆に言えば「好奇心旺盛で色んなものにアンテナを張っている」ということです。多くのことに興味を持ち、自分の人生をより楽しく豊かにしていこうという姿勢は、長所でもあるのです。ただし、親や教師がそういう性質の強い子どもに向き合う場合は、なるべく「不要なものを捨てていく」ことを教えた方がいいと思います。こういう気質を持つ子どもたちは、こちらから色々と与えなくても、自ら面白そうなものをどんどん探し出してきます。その上、マルチタスクが苦手なのでそれによって頭の中がごちゃごちゃします。なので、大人としては、与えることよりも絞っていくことを重視し、より重要度の高い事柄に集中出来るように導いてあげるほうが良いと思います。
個人的な感覚として、授業中にお喋りをしたり立ち歩いたりするような、いわゆる集中力や落ち着きのない子どもは、人生展望の面でも、色々なことに手を出して器用貧乏になりやすい傾向にあると思います。(私自身がそうなので(笑))
ですから、「好奇心旺盛でなんでもやってみたがる」「何かしていないとそわそわして落ち着かない」そんなタイプのお子様をお持ちの保護者のみなさまは、このようなことを意識されてみてはいかがでしょうか? 色々なことに挑戦はさせつつも、適性や重要度の低いと思ったものは切り捨てる、かつ、「これだ!」と思う事柄に関しては、一時的に気が逸れていても完全に忘れる前に継続させる。この手のタイプは、大好きなことでも他のことに気を取られて忘れてしまったり、一時的にやりたくなくなる時期があるのです。その時に完全にやめてしまわないことが大切です。
中京大学文学部言語表現学科卒業。中学/高校教諭一種免許取得(国語)。「勉強は楽しく」をモットーに、こどもたちが「正しい日本語」と「考える力」を身に着けられるよう導いていきたいです。