バイリテラルとは、バイリンガルの中でも、2つの言語の「読む」「聞く」「話す」「書く」の4つの技能を同時に修得している状態を指します。一方の言語が「聞く」技能のみの場合、聴解型バイリンガル、また、「聞く」「話す」の技能のみの場合、会話型バイリンガルと呼ばれます。ハワイでは以前十分な日本語教育が行われていなかったので、昔の日系二世はこの聴解型あるいは会話型のバイリンガルが多数存在しました。将来、日本語を駆使するビジネスを選択肢に考える場合、やはりバイリテラルのレベルでなければ役に立つとは思いません。単純労働であれば、それほどまでの能力を必要としないのかもしれませんが、社会で活躍するためにはやはりそれ相当の実力が期待されます。後悔先に立たず、今ある機会を最大限に利用して、子どもたちの明るい未来のために日本語の学習に頑張ってもらいましょう。

バイリンガリズムと認知理論

 バイリンガリズムにおける言語能力と認知機能及び学力の関係について、ジム・カミンズ氏は下記の理論を展開しています。

(1)風船説と氷山説

 第二言語を使用している時は、第一言語の脳内の領域はしぼみ、第一言語を使用している時は、第二言語の脳内の領域がしぼむという風船説(分離基底言語能力モデル)と二つの言語を修得したり使用したり場合、別々に機能しているように見えたとしても基底部分は共有しているという氷山説(共有基底言語能力モデル)。

(2)敷居理論

 下段と中段、中段と上段の間に敷居があると考えた場合、下段にいる時は限定バイリンガル、つまり、二言語とも年齢相応のレベルに達していないため、バイリンガルであることが認知能力にマイナスの影響を与える。それが敷居を越えて中段に達すると偏重バイリンガルになり、一言語は年齢相応となるため、認知能力に与える影響力はモノリンガルと同じレベルになる。そして、さらに敷居を越えて上段に達した時に均衡バイリンガルとなるので、二言語とも年齢相応のレベルとなり、バイリンガルであることが認知的にプラスに働くという理論。

(3)発達相互依存仮設

 第一言語やそれに伴う認知能力が発達しているほど第二言語も発達しやすく、第一言語の発達が低い段階だと第二言語や認知力の発達も難しくなるという仮説。つまり、第二言語の習得は、第一言語の発達度に依存しているという考え方。

(4)生活言語能力と学習言語能力

 言語能力には、抽象的な概念や高度な思考を伴わない言語活動で、一般的には2年程度で身につけることができる生活場面で必要とされる能力(生活言語能力)、また、教科学習など抽象的な思考や分析・統合・評価といった高度な思考技能を必要とする、認知的な負担の大きい習得に5年から7年以上必要とされる能力(学習言語能力)の2つがあるという考え方。

 これらの考え方には、様々な批判があり、また、年齢あるいは学習環境などにより個人的な条件は千差万別なので、参考程度に考えれば良いと思います。但し、すべての考え方に共通しているのは、第二言語の完全な習得には時間と努力を要するということです。

 言語学習は、算数・数学と違って系統的な学習がしにくく、総合的な理解を必要とします。実際に役立つ技能にするためには、何事でも一定の技能レベルを身につけることが必要です。長期的な計画性をもって、日本語の習得に励みましょう。子どもたちには、一定レベルの技能を達成できるだけの環境が揃っており、それをあたたかく見守りサポートするご両親と教師がいるわけですからね。

マハロ!