こども学習教室・日本語で学ぶ国語と算数

第一言語のすすめ

 第一言語とは、修得した複数の言語の中で優先的に使用する言語を指します。他方、母語は生まれて初めて身につけた言語のことです。第一言語習得説には、大きく分けて2つの説があり、(1)「後天的に学びとる能力だ」という説、並びに(2)「持って生まれた生得的な能力(言語生得説)」という説があります。米国のバラス・フレデリック・スキナー心理学者は、第一言語は、後天的に学び取る能力として捉えて「子どもはまず、周囲からの刺激(例えば、大人の話す会話を聞くなど)を受ける。そして、子どもはその言葉を真似する。子どもが大人の言葉を真似すると、周りの大人は褒めたり喜んだり微笑んだり言い直したりする。これが反応である。それを見て子ども習得は強化され、習慣づけられていく」と主張しました。一方、米国のエイブラム・ノーム・チョムスキー言語学者は、言語生得説を支持して、「子どもが大人から受ける情報は限られたものなのに大人と同じ文法を修得するのは、もともとその能力を持っているのではないか。つまり、第一言語を取得する能力は、生まれたときに既に持っている能力、生得的な能力だ」と主張しました。

そして、現代に至るまで下記の様々な理論が提言されています

行動主義学習理論

 子どもは周囲からの刺激を受けて言語を習得すると考える理論。20世紀前半に発展した行動主義心理学は、学習を主な研究対象とし、習慣形成理論などの学習理論を展開しました。そして、刺激の貧困の中でも幼児が正しい文法を獲得することから、刺激→模倣→習慣形成という言語習得過程を否定しました。

原理とパラメーターのアプローチ

 チョムスキーの生成文法理論に基づく理論で、言語の領域固有性(人のさまざまな認知機能はそれぞれ独立して存在しており、言語に関する領域は、そのほかの認知機能を司る領域とは根本的に別であるという考え方)を認める立場を取ります。全ての言語に共通する普遍文法という原理があり、普遍文法はどんな言語の文法にも変わることができ、普遍文法を個別言語に対応させるための可変値であるパラメーターが存在すると考えます。子どもはインプットに基づいて、習得する言語のパラメーター値を設定します。例えば、日本語という個別言語に変えたい場合、パラメーター値を日本語の値に設定し、日本語という個別文法を獲得し、アウトプットするようになるという理論。

トマセロの言語獲得モデル(用法基盤モデル)

 言語を習得する能力は生得的であるが、言語そのものに関する知識は後から学習されるものだという理論。言語を習得するためには周りの状況を認知する能力と学習が必要であり、第一言語習得には領域一般(言語の領域固有性を認めない考え方)の認知能力、特に社会的認知スキルが働いていると考えます。後天的に獲得された慣用的な表現や社会独特の言い回しなどを含む、言語全ての側面を研究対象としています。

個人的な一考察

 第一言語の研究対象を人間以外に広げた場合、我が家の猫は、第一言語を「後天的に学びとる能力」として習得したと考察します。理由としては、既述したように我が家の猫は親猫との接触が殆どありませんでした。そのため、生後間もなく、近くにいる鳥や犬の鳴き声を真似していました。最終的に、猫の発声をしていますが、イントネーションあるいはアクセントは私たち人間の言葉によく似ています。もともと野生動物は、敵に発見、あるいは獲物の捕獲失敗を避けるためにあまり発声をしません。ところが、人に飼われている犬猫は、人から声をかけられるとたいてい返事をします。これは、犬猫が後天的に人間とのコミュニケーション能力を獲得したことによる結果だと思いませんか。将来、バウリンガルあるいはミャウリンガルが発達すると、このことが解明されるかもしれませんね。

第一言語の習得について

 さて、第一言語の習得について諸説いろいろありますが、基本的に子どもが周囲からの刺激を受けて言語を習得するという過程には、諸説における相違はありません。つまり、第一言語の習得には、子どもが、言語を学習できる機会を増やすことが重要であるということです。ですから、子どもが、楽しく言語を習得できる環境を積極的につくってあげて、言葉の習得の手助けをすることが我々にとって本当に大切なのです。

マハロ!

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