タパという言葉を耳にしたことがありますか?

タパとは、昔のオセアニアの島々で作られていた樹皮布で、機織りの製法が伝わりづらい孤立した島々で、独自の布文化として発達しました。ハワイでは「カパ」と呼ばれ、衣服や寝具など人々の暮らしの中で利用されてきました。


このカパという布は、多くの手間と気の遠くなるような時間を経て作られます。

まず、木の幹から、外側の樹皮を剥ぎます。次に、樹皮から硬い外皮のみをこすり落とし、内皮を水に浸して繊維を腐食させます。石や木の台の上にそれを置き、木の棒で叩いて伸ばし、最後に仕上がったものを天日で乾燥させて、完成します。


ビショップミュージアムでは、紙とも布とも見分けがつかない大きな樹皮布に、特徴的な幾何学模様がプリントされている素晴らしいカパの展示を見ることができます。

繊維を織るのではなく、叩いて伸ばす文化。原始的だからこそ、興味深く、美術館で展示されているカパの前に立つと、昔のハワイの大自然の中、おおらかな女性たちが樹皮を叩いている音までもが聞こえてきそうです。


日本の文化に目を向けると、同じように植物の皮から作られるものに和紙がありますが、和紙は、植物の繊維などを水に溶かしたドロドロの原料を薄く伸ばす「漉き」という工程を経て作られます。楮(こうぞ)という植物を原料とすることが多く、その他にも雁皮(がんぴ)や三椏(みつまた)という植物などが使われます。中でも三椏(みつまた)は、繊維が柔軟で細く光沢があり印刷に向いているため、日本の紙幣の原料となっています。

余談ですが、ハワイで使われているアメリカのドル紙幣の原料は綿で、私たちがよく着る服地の原料と同じものだそうです。日本のお札は紙、ハワイのお札は布に近い?と思うと、これも面白いですね。

遠く離れた国エジプトでは、パピルスという草木の茎の繊維を縦横に重ねて作る世界最古の紙、パピルス紙が作られました。パピルス(PAPYRUS)は、紙(PAPER)の語源となり、その後、紙は、世界中で様々な原料や加工方法が用いられ、人々の知恵によって育まれて、生活の一部としてなくてはならないものとなっています。


このパピルスという植物、実はハワイの身近な場所で見ることができます。パピルスの茎は、断面が三角形のとても特徴的な形をしているのですが、もし、お子さんとホノルル動物園に行くことがあったら、茎の形をヒントにパピルスを探してみてください。水辺に生えている、茎の太さが3、4センチ、高さ1.5〜2メートルほどの、線香花火を逆にしたような形をした植物です。

ホノルル動物園の広い園内には、ハワイの固有種や南国ならではの植物がたくさんあるので、動物だけではなく緑豊かな自然を楽しむこともできます。

私たちの暮らしの中で、なくてはならない布と紙。自然の恩恵を受けて布や紙を作り出した昔の人たちの知恵が、私たちの生活を今も豊かにしてくれています。