ナショナル・モールとは、ワシントン記念塔と国会議事堂を結ぶ国立公園の両側にスミソニアン国立博物館あるいは国立美術館などが林立する一帯を指します。スミソニアン国立博物館である宇宙航空博物館、米国歴史博物館、自然歴史博物館、アフリカ美術館、米国先住民博物館など様々な博物館を一堂に見ることができます。

 私たちは、まずスミソニアン城(ビジターセンター)を訪問しました。城の形をした立派な建物の中に様々な展示物が置かれ、各スミソニアン国立博物館・美術館の案内がありました。また、建物周辺には端正な庭園が広がり、創設者のJames Smithson氏についての説明もありました。

 隣接する国立アジア美術館では、北斎展が開催されており、北斎の美術作品を鑑賞しました。北斎は小説の題材として度々取り上げられ、写楽や広重といった新進気鋭の若手画家の登壇によって北斎が悶々として落ち込み悩んでいく様子が記述されていましたが、実際の作品を見ると、むしろ絶えず向上心を目指していく、北斎のその感性の多彩さに目を見張りました。北斎自身も実際、長生きしてすべての絵画に命を吹き込める存在になると豪語しています。北斎は、美術作品に限らず、黄表紙本などにも挿絵を描いており、イラストレーターあるいは漫画家としての腕も素晴らしく、どうしたら毛筆一本でこのように表現できるのか北斎の真剣に描く当時の姿を想像せずにはいられませんでした。掛け軸、屏風絵、墨絵など豊富な北斎の作品群を鑑賞することができて、富嶽三十六景だけではない北斎の魅力を改めて発見しました。結局、他のアジアの芸術作品もとても興味深く、閉館時間までゆっくりと鑑賞しました。

 翌日は、国立自然歴史博物館を訪問しました。恐竜の化石、野生動物の剥製、多種の鉱物資源など様々な自然についての展示及び説明がなされていました。特に世界的に有名なダイヤモンド「ホープ ダイヤモンド」(45.52カラット)が、宝石店で見るように間近で見ることができたのが印象的でした。ルパン三世あるいは怪盗キッドならすぐにでも盗みだせそうでしたが、小石ぐらいの大きさのダイヤモンドしか見たことがないので、この宝石の実際の価値を想像できず、ただただ感心するだけでした。

ホープ ダイヤモンド

 その後、国立美術館 西館を訪問しました。ダビンチ、ゴッホ、モネなど西洋美術の絵画が壁いっぱいに展示されていました。迷路のような部屋をいくつも通り抜けていくので迷子になりそうでした。全ての作品には、画家の思いが込められており、それぞれの画家の作風が伺われました。繊細で緻密なダビンチの絵、鬱積した感情をそのまま発散させたようなゴッホの絵、自分の感性をありのままに表現したモネの絵など画家そのものの人間性が映し出されているようです。実際の絵画を目の前にすると、それぞれ思いを込めて描かれた当時の画家の描く様子が目に浮かぶようです。結局、あまりにも作品数が多かったので、閉館時間までに全てを鑑賞することはできませんでした。全てを鑑賞するためには、数日かかりそうです。

 翌日は、国立航空宇宙博物館を訪問しました。実物大の宇宙船や飛行機が展示されていましたが、幼少の頃のイメージと異なり、人間がお酒の醸造用の樽ぐらいの狭い空間に押し込まれて宇宙に放り出されるのは、あまりに殺生で、アニメ「宇宙兄弟」で羨望の的として扱われた宇宙飛行士の姿は目の前になく、スタートレックのエンタープライズ号のような宇宙船が見られるのはいつだろうかとふと思ってしまいました。何世代か後の未来の人類が、宇宙を自由に探索できる日が来ることを心から祈ります。館内には、バーチャルリアルティの展示もあるので、子どもたちは楽しそうに参加していました。人類の空・宇宙への挑戦の歴史を興味深く垣間見ることができました。

 その後、国立米国先住民博物館を訪問しました。米国における先住民の歴史が紹介されており、ディズニー映画にもなったポカホンタスの実際の生涯などが展示されていました。西部劇にでてくるインディアンといった程度の知識しか持ち合わせていませんでしたが、他民族による侵略・迫害といったものは凄まじく、先住民に対する差別法案が一部の州で成立していたことを初めて知りました。ハワイでも、ハワイ先住民の主権問題、また、日本でもアイヌ民族のことが取り上げられることがありますが、人類が繰り返してはならない教訓の一つですね。博物館には先住民による美術工芸作品もたくさん展示されており、先住民の暮らしぶりや文化などがよく理解できました。

次回は、ナショナル・モールの後半編を紹介します。                                                   

マハロ!